雑記する
雑録です。
2009
September 27
September 27
しょっぱなを飾るのはアンセイル(またはアンタイルともいうらしい)とかいうアメリカ人作曲家。「誰だよ」と言ったら負けですか。「バレエ・メカニーク」が有名らしい。広辞苑・ジーニアスには掲載されてなかった。リーダーズでそれなりに詳しく書いてるってことはマルティヌーとかマリピエロみたいな知名度だろか。ばらばらのモチーフを縦横無尽に駆け巡るような、アメリカンな多忙を極めた音楽でした。アメリカ的現代性のシンボル、ヴァレーズ的な音の混雑振りもところどころに散見されて、ゲンダイ無理解の私には「うにゃあ」ってなるところもあるにはありましたが、でも全体的に一つの信条に従うことなくぐいぐい進んでいく。こういう音楽を聞くとまず思い起こされるのがストラヴィンスキーで、彼の子供めいた好奇心、に似た何かを感じる。マイナーネームの割にはなかなか良曲でした。
次はコープランド。Naxosのブックレットでも悪評だったと紹介されていた彼のピアノ協奏曲はなかなか晦渋。アメリカンというより寧ろ六人組チック。「ビリー・ザ・キッド」の「ばこーん、ばかーん」テイストもどこへやら、現代音楽ではない別のベクトルの理解しづらさがあります。かといってアンセイルのような「バカじゃねーの」感がない。第一楽章はすこくきまじめ。序盤の金管からして真摯過ぎる。「ビリー・ザ・キッド」を聞くかぎりは弾けたタイプの人かなあとは思うのですが、意外とその精神性は真面目一徹なんじゃーないでしょうか。そんな人が洒落た音楽を書こうとするからさあ第二楽章は大変。半端なスウィングがヴァレーズ的な混雑感の上にのっかかって消化不良気味。あんまり好きになれません。まあ、このごちゃごちゃ具合がかえって現代アメリカンと言えば、頷けないこともないのですが。
オネゲル。ピアノとオーケストラのためのコンチェルティーノ。初体験です。六人組の一人でミヨーと並んで一番有名な人ですか。前から聞きたいと思っていたのですがなかなか安くて良さ気なCDが無くて困ってました。聞いてみれば六人組全開、サティの毒っ気を見事に継承したピアノ。それとなくあまったるーくてチープなオーケストラと、見事にフレンチモダンな音楽でした。大変おしゃれ。中間部の急激に悲愴な色合いを帯びるあたりもイヤミっぽい(笑)。しかしアホっぽさをアピールしているわりに、全体としては簡潔美の世界に入った音楽だと感じました。様式美でオネゲルは有名らしいのですが、「ああほんとだ」ってなりました。バカのくせに聡い。時計仕掛けを耳に当てて聴くような、童心に帰らされるような音楽です。そのあたりはアンセイルに似てる。六人組の音楽ってチープで子供じみていて、それでいてどこか懐かしい気がしてしまう。根幹はとてもきまじめな人達(まあきまじめにふざけるのが彼らのセオリーだったんでしょうが)だったんじゃないかなあと思います。とってもハッピーになる音楽です。良曲。
ラヴェル。以前にアルゲリッチ&アバドで聞いて「うげえ」ってなってそれ以来ラヴェル離れを引起させられたピアノ協奏曲に再チャレンジ。良い演奏でした。第一楽章のテンポ取りからして極めてクイック。アバド盤ではのろのろとださいテンポだったのが急激に締まってモダーンな音楽に。ピアノとオーケストラのバランスが難しそうな曲ですねー。Michael Rischeはほとんど裏方に回っている印象ですが、仕事自体はきっちり手堅くやっています。くるくるくるくる回るような音楽で、さすがにその楽しさは上記三名ではちょっと適いそうにない。プレストのポップさの素晴らしいこと。回る回る! ラヴェルって純然なエンターテイナーだなと改めて感じます。喚起される情景があるわけでもない、(この曲に限っては)神秘性があるわけでもない。ただただ純然にハッピーな旋律が流れ込んでくる。Michael Rischeも技巧をひけらかすよりは「おもろいっしょ」みたいなスタンスで笑わせてくれる。ラヴェルってそういうエンターテイナー的な側面を物凄く強く持ち合わせてたと思うんですよね、何か。通俗的と言ってもいい。アバドの失敗しているのは室内楽ばりの神秘的な、神がかったようなピアノ協奏曲を目指しているあたりにあるんでしょうか。こんな風にざっくばらんにポップに演奏してくれた方が個人的にはとっても好感が持てます。ラヴェルって通俗の美、通俗の偉大さに常に着目し続けた作家だと思ったり。 名盤でした。特にアンセイルはマイナーネームの割に良かったですね。続編も出ているらしいですので、機会があればそっちも買いたいなあと思います。
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